死の匂いがするコント11選

怖いコントが好きだ。

一口に怖いと言っても色々な種類がある。
不気味であるとか、危害を加えられそうであるとか、不安に駆り立てられるとか、そもそも全く意味が分からないとか。

そういったキワどいテーマのネタはテレビで使えないものがほとんどなので見たことない人も多いと思う。
そもそもネタ見せ番組というものがテレビから絶滅しつつある。
エンタもない。
レッドシアターもない。
オンエアバトルもない。

あるのは情報番組だけだ。
緻密で上質なコントを作り、狂気を持った彼/彼女らが食レポでくだらないコメントを言うだけの存在として消費されているのを見るとなんとも言えない気持ちになる。
いいともが終わり、ヒルナンデスが生き残る。そういう世界だ。
本気のお笑いではなく明日使える情報をテレビ視聴者は望んでいる。
そんな世界が個人的にはちょっと寂しい。


だから、いま見てほしい。
彼らが本当に輝いている舞台での姿を。

あ、劇団ひとりのやつは夜中に一人で見るとおしっこちびるぜ。










しずる 「田沼さんが転んだ」

人生につまずいて「よし、死のう!」と決意した田沼さんのお話。
レッドシアターでは青春コントの申し子として一斉を風靡したしずるだが、死の匂いやブラックユーモアのあるコントも秀逸。しずる最高傑作。



鳥居みゆき 「麻衣子」

ダウンタウン松本人志が女は性の対象としての価値を必ず持ってしまうから芸人に向いてないと言っているらしい。
ただ、これは女である鳥居みゆきにしかできないネタだ。鳥居みゆきという狂気が「愛されたい」「子作り」といった女固有の普遍的なテーマをシニカルに演じている。
ちなみに「数子」というネタは今作と設定が同じなので気になったらぜひ。



チュートリアル 「葉」

首吊り自殺に失敗した男とそれに遭遇してしまった男。画力が強い。
チュートリアルの中でも傑作とされているネタ。



パンサー 「気づこう」

若手人気ナンバーワンの芸人のネタ。とにかく構成が素晴らしい。2回見ると伏線がたくさん張られていることがわかる。気づこう。



バナナマン 「ルスデン」

留守電に残された38件のメッセージが部屋という空間をサスペンスに仕立て上げる。26分という長尺ながらそれを感じさせないおもしろさがある。コント職人バナナマンの名作。



次長課長 「チコちゃん」


幼稚園の年長チコちゃんの話。どこかが壊れてしまっているチコちゃん。自転車やホースに対する暴力的で情緒不安定な接し方も、他の子どもたちと同じく「ママがいなくて寂しい」だけなのではないかと思って見てみると、途端に切なくなる。



千原兄弟 「ダンボ君」

3の倍数でアホになる世界のナベアツ(桂三度)と千原兄弟によるめちゃめちゃ恐いコント。怖さで言ったら一番。もの静かで乾いたせいじと熱く騒がしいジュニアのコントラストが場の異常性を助長する。千原ジュニアの狂気が詰まっている。これ、全然笑えない



劇団ひとり 「304号室 青木」

THE・テレビでは絶対に流せないネタ。病院の屋上でマジックの練習をしている患者。途中ラジカセから流れてくる歌が耳にこびりついて離れない。
あまりに怖すぎるので「検索してはいけない」にも載っているらしい。



NAMIKIBASHI  「TRASH BOY」

ゴミ処理ボーイのトラッシュくんによる啓蒙ビデオ。法によって厳しくなる国民の統制、避妊具の使用の禁止、見え隠れする大きな権力。 星新一ショートショート的なブラックユーモア満載。
ちなみにNAMIKIBASHIというのはラーメンズ小林賢太郎が参加しているユニット。



サンドウィッチマン 「パラダイス葬儀社」

ビジネスとして人の死を扱う葬儀社のお話。なによりも設定が素晴らしい。死や禁忌と隣接することで笑いはより大きくなる。
サンドウィッチマンのなかで一番好きなネタ。



ラーメンズ 「採集」

怖いネタとして最も有名な作品。バナナマンの「ルスデン」と同じく長尺でサスペンスの要素が濃い。設定、展開、オチのすべてが完成されている。
コバケンが一人で体育倉庫に残されてからは目が離せない。事実を積み重ねることで芽生えていく恐怖と一人で戦う男。観客たる我々は惰性で笑ってしまうが、下り坂にのって加速していく恐怖には抗えない。20回以上見ているが何回見ても面白いし怖い。素晴らしい。






以上11作品を紹介した。

一つでも気に入る作品があったなら、嬉しい。
あなたも陰湿コントが好きなヤバい仲間だ。